惑星からの逃走線

読書記録や研究上で思いついたこと、日々の雑感など。

Agent-based Simulation と Actor Network Theory について

 ANT(Actor Network Theory)については,結構前からその存在自体は知っていて,またABS(Agent-based Simulation)との接合,みたいな考え自体もあったが,あまり考えが纏まらなかったので特にBlogには書かないでいた。いまだ確固たる意見を持つには至っていないが,一応少し着想を得たので,メモ書き程度のことを書き散らしておこう。

 

 まず,ANTは主体性の帰属対象を人間のみに限定せずに,人間以外の生物,あるいは無生物にまで広げた箇所に「観点としての」新規性がある思想である。私の理解によれば,この理論はOPP(Obligatory Passage Point)という視点を定めたうえで,それに関与する/関与される一切の存在を『アクター』として記述するものだ。

 そして,この考え方は実はABSとかなり相性が良いのでは,というのは私の意見である。つまり,ANTはヘテロジニアスな各種アクターが織りなす総体として,現象を記述する点にその特徴があると私は見ているのだが,これは発想自体はかなりABSに近いそれだと言える(もっともABS自体に私の知る限りではコンセンサスのある定義があるわけではないし,多様な側面がある以上これだけで似ているとするのは牽強付会に過ぎるかもしれないが)。たぶん,一捻り二捻り程度の細工をすれば,かなり良い具合にABSに乗っかるのではないか。

 

 具体的に,どうABSあるいはより一般に数理的な言葉にのせるか。

 たぶんだが,かなり素直にフィッティングしてくれそうな気もする。ただ現段階では私自身がエージェンシーに関する諸理論やANT, ハイブリッド・コレクティヴに関してかなり無知な状態にあるため,なんとも言い難い。しかし,人間以外にエージェンシー/主体性を措定するというのは,個人的にはかなり魅力的に想える。シミュレーションという世界でいかに非生命にまでエージェンシーを付与しようと実装できるか,脳の体操には少なくとも良いと思う。もっと言えば,Agent間の相互作用そのものがある種のAgentとして立ち現れるような,そういう系も措定可能かもしれない。