ムルンギン族の婚姻体系は何処から発生した?
レヴィ=ストロース「親族の基本構造」第14章は一部の人々にとって興味深いものだ。
実はこの章はレヴィ=ストロース自身が書いたものではなく、数学者アンドレ・ヴェイユが書いた。彼はこの箇所で、オーストラリア・アボリジナルの一部族「ムルンギン」の婚姻体系を数学上のコンセプトである「群論(Group Theory)」を使って説明しようと試みた。
と、ここまでは結構有名な話だし、なぜこのような婚姻体系が維持されてきたかについては「女性の交換」(一部からお叱りを受けそうな言い様だが、しかしレヴィ=ストロースの用語としてこういったものがある)のためであるという主張がなされている。
一方で、これはどのような歴史的過程を経て発生したものだろうか?
謂わば、「ティンバーゲンの4つの『なぜ』」でいうところの機能/適応の説明にしかなっておらず、特に「系統発生」の観点からの説明が不足している、ということである。
寡聞にしてこれに答えた研究を知らないが、これの説明は中々難儀そうである。
というのも、謂わば人間社会の進化というかなり数理的には「不定形」なものからどうやって群論のような、非常に抽象的かつ普遍的な構造が発生するかを説明する訳であるから。
ただ、非常にチャレンジングとはいえ修論でこれをテーマにするのもありかな、とは思いつつある今日此の頃である。