惑星からの逃走線

読書記録や研究上で思いついたこと、日々の雑感など。

先日のZansa勉強会で、[at]takeshi0406さんがなさった発表について

 先日、Zansaという勉強会に参加させていただいた。

第19回勉強会を開催しました。『統計と会計』『社会の意見のダイナミクスを物理モデルとして考えてみる』『PythonによるDeeplearningの実装』 | Zansa

 

 こちらで@ さんがなさった発表が大変興味深く拝聴できた。

社会の意見のダイナミクスを物理モデルとして考えてみる

 

 発表自体は物理学で使われる Ising Model というコンセプトを合意形成に応用したというもので、所謂 Sociophysics の分野に属することであった(多分)

 個人的には結構単純なモデルでもバブル等の現象に対しそれなりの説明力を持っているという辺りを興味深く聞けた。

 そして、質疑応答の時間に、他の聴講者からこんな質問が出た。

「モデルというのはいくらでも複雑にできる。また、複雑にすればいくらでも現実のデータとマッチングするようなモデルは作成可能なわけで、ではどうやって作ったモデルが『正しい』のかを検証するのか」

 私はそれを聞いて、「ああ、たぶんこれは一番されたくない質問であるなあ」と思った。

 なぜなら、この質問に対する解答はtakeshi0406さんは(そしておそらく、私を含め社会シミュレーション研究者の誰も)「持っていない」からだ。

 社会シミュレーションは、シミュレーションという行為それ自体によって現実に影響を与えてしまうという珍しいディシプリンだ。

 なので、通常のシミュレーション科学が使うような「未来予測でモデルが正しいかを検証する」という手が使えない。

 内挿することも可能だが、これは正に「いくらでもモデルを複雑にできる」ことから意味が無い。

 これに関しては、いまだこれぞという手法は見つかっていないのが現状である。