惑星からの逃走線

読書記録や研究上で思いついたこと、日々の雑感など。

突然に

今日は体調が優れず,午前しか学校に行っていない。 なぜか放置していたこのblogを突然再開したくなって,今これを書いているというわけだ。 最近,映画を観たくてしょうがない,そんな時間はないのだけれど。 仕方がないのでyoutubeでそれらの予告編などを…

『知恵』

のっけから私事ではあるが,私の両親は二人とも高卒で,明らかに東大卒・現大学院生の私より,学歴としては下である。また,彼らは宣言的な(明示的に言葉で示せるような)知識の量においても,私に遠く及ばないであろう。つまり,一般的な観方をすれば,まず…

世界の粒度について

いきなり大上段に構えた話で恐縮だが,近代科学は基本的には――無論,例外は多々ありそれは最近になって増加傾向にあるように見えるが――要素還元主義的であった。世界を十分に分割し,分割された範疇内での事象を可能な限り徹底的に観察し,考察し,実験を行…

今週読んだ論文20151220

今週も大して読めていないし分野もてんでんばらばらなので,もう少し量を増やした上で戦略的にどのディシプリンの論文を読むかを決めないといけないだろうと思った。今回は日本語の論文ばかりである。 向山恭一. "マルチチュードとわれらの時代の革命." (200…

Agent-based Simulation と Actor Network Theory について

ANT(Actor Network Theory)については,結構前からその存在自体は知っていて,またABS(Agent-based Simulation)との接合,みたいな考え自体もあったが,あまり考えが纏まらなかったので特にBlogには書かないでいた。いまだ確固たる意見を持つには至っていな…

今週読んだ論文20151213

今度から,自分の読んだ論文を日曜日にSNS上へ報告することにした。では早速。 舛本現. "ラムダゲーム: メタゲームへのアプローチ (数学解析の理論的展開の計算機による支援・遂行可能性)." (2004).ラムダ計算+GA,で「ゲームのルールそのものが進化するゲー…

『歴史』とは現在を説明するための,過去に関する仮説である

我々はいかにして過去を認識しているのか。 というのも,過日に集合的記憶論についてちょっとした発表をしたのだが,少しだけ『歴史』とは「事実生起した事物」という意味か,それとも我々の間主観あるいは主観としての過去に対する表象か,という論点が提出…

『今,ここ』ではない時空。

最近,あまりものを考えていない。 毎日がだいたいルーチン化してきていて,たぶん簡素なシミュレーション内のエージェントになったらこういう感じなんだろうなあ,という気がする。 下手をすれば,私の生活に関するあらゆる変数を綺麗にフーリエ変換できる…

私が善く生きるには,私は自らの死す日を知るべきではない

昨日,ちょっとした勉強会のあとに友人らと駄弁っていたが,そこで(有限手番の)経済実験では最終ターンで一挙に協力率が下がってしまう,またそれはゲーム理論的に有限手番のゲームでは後ろ向き帰納法を使って考えることでも,ある程度は納得できる,などと…

人間の条件と,死者を想起すること。

最近,5年前に亡くなった母方の祖父を思い出すことが多い。 理由ははっきりしていて,同じような別れを母方の祖母とする日が,そう遠くない――もちろん,明日か10年後かは分かる由もないが――だろうという,漠たる予感があるのだ。 人間にとって,やはり死は受…

ハンセン病―排除・差別・隔離の歴史 作者: 沖浦和光,徳永進 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2001/11/15 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (3件) を見る 私は電車の中で,図書館から借りたハンセン病の隔離の歴史についての本を読ん…

記憶の『読み方について』

『既在性』という,ハイデッガーの用語を知った。「記憶とは過去の事象を表すものであり,既に存在しないが記憶の想起は現在に属する事象である」ことを指し示すものであるらしい。 一般に記憶は,過去の事象の痕跡と,それの読み方から構成される,と思う。…

頭の中の真珠

自分自身がものすごく辛かった時期のことを懐かしさをもって回想していることに気づいた。 アコヤ貝は自身に侵入した異物から身を守るために異物を真珠に変えてしまうが,人間の精神も不快な記憶を『想い出』という形に変えてしまうのかもしれない,そういう…

自分がクズだと思うのをやめた

といっても,突然実際にクズでなくなるわけにもならず。 とはいえ,これは小さいながらも重要な気がする。直観だが。

神の視点と人間という存在者

西川アサキ氏という,かなり恐るべき著者がいる。 魂のレイヤー―社会システムから心身問題へ 作者: 西川アサキ 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2014/05/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 魂と体、脳 計算機とドゥルーズで考える心身…

社会科学者の人文学に対する観方

どうも,学問として探究対象が被っているという事実にも起因するのだろうか,社会科学者の人文学に対する意識って少し歪な部分があるような気がする。具体的には, 社会科学の方が,数理的厳密性において優れているとして社会科学の優位を信じている社会科学…

大事な大事な(天空への)アタックチャ〜ンス

ふと思ったが,もしも今最も人口増加が甚だしいアフリカや南アジアといった地域でも人口ボーナスが人口オーナスに転じたら,どうなるであろうか。 資源の消費はある程度抑制されるだろうから「環境には優しい」のかもしれないが,要は地球全体が今の日本とか…

頭の良い人・理想を持てている人

頭がすごく良い(良すぎる)がゆえに,夢というか有り体な言い方をすれば誇大妄想のようなイマージュを持てない人がいるな,という印象がある。言うならば,頭がよくかつ現実的な判断がとても上手いがために,理想とか思想のようなものが持てない,と言うこと…

「人類を滅ぼそう」は解決策だろうか?(たとえ,それが冗談であったとしても)

よく,twitter等で社会的な問題や価値観同士の摩擦などが問題になったとき,ツイッタラーたちが冗談半分に「人間がいるから全ての問題が起きる。じゃあ,人類を滅ぼせば全て解決ではないか!」などと言い合っていたりする。 これは一見した限り,論理として…

大衆を「自然」と看做す為政者の発想と社会シミュレーション

為政者は,多分に大衆(もっと有り体にいえば被治者)を一種の『自然現象』として看做す思考乃至発想が,あるように思われる。丸山眞男によれば江戸期武士階級などは如実にそうであったという。 さて,具体的に被治者を自然と看做す発想は,どういったものか。…

バナバ人という民

ci.nii.ac.jp こういう論文を偶然見つけた。 バナバ,という島が,現キリバス共和国にある。そこは良質の燐鉱石を産出したことから,悲劇が始まった。以下は,主に当該の論文を参考にした,私なりの解釈も含んだバナバとその民の歴史だ。 もともとこの島に住…

安保法案関連の議論についての所感

いい加減,玉虫色的・日和見的態度をとり続け沈黙するのも良くないだろうということで,自分なりの考えを書いてみる。 といっても,実は「安保に賛成か/反対か」という二分法に答えるものではないので,相変わらず玉虫色なのは間違いない。しかし,個人的に…

もし世界が百人の村だったら,百人のうち百人が犯罪を犯しています。

たぶん,小数点以下を四捨五入すれば掲題の通りになると思う(ちゃんと統計とったわけではなく,私の直感だけど) こんにち,「他民族に対し犯罪(戦争犯罪・虐殺・民族浄化など)を働いたことがない民族」などというのはごく一部の狩猟採集民ぐらいのものであろ…

自分の頭の中に「他人エミュレータ」を入れておく?

他者の人格をエミュレートする,ということについて,蛇足ながらもう少々述べたい。 kaito-y.hatenadiary.com この「他者の人格をエミュレートする」という行為には,いくつかのタプルがあるように思える。 相手の価値観または世界観(世界を優先度に基づき序…

「成熟した人格」とは

こういうウェブページがあった。 自己実現、人間的成長・成熟1〜オルポートの成熟した人格の特徴|オリンピック選手、メジャーリーガーが学んだ メンタルコーチ 立命館大学大学院教授 高橋慶治のブログ 列挙されていた「成熟した人格」の特徴は,以下の通り…

無題

刹那なる人間の生 悠遠たるその連鎖 ときに問う,「我ら何処より来たりて,何処に行くや」 ただ,深淵の裡に虚しく木霊し,減衰す 而して深淵は我を魅了せり 奈落に投身すれば,我もまた既にその一部

「虚学」という虚像

実学でない,と批判されがちな学問にはひとつ共通点がある。 それはその価値をある種のトートロジーに求めている点である。 具体的には,西洋古典学が「西洋古典学を学ぶと古代人の馥郁たる精神の香りに触れることができる,ゆえに西洋古典学は有益である」…

『真面目系クズ』に足りないのは物語では?

私は自他ともに認めるクズである。締切を守らなかったり,敵前逃亡したり,やるべきことを後回しにしたり,まあ意志はあっても体が追いついてこないと言おうか。とにかく,自分でも「使えねーヤツ」だと思う。人によっては『真面目系クズ』という有難い称号…

「今を生きろ」への反問

のっけから私事だが,私は自身の生家が火災で失われるという災禍に見舞われたことがある。この時,多くのアルバムやフィルム,思い出の品も同時に消えた。今思っても,胸裡に痛みが走る。 あの,いかにも戦後といった風体の家はもうない。小さいが木々が繁茂…

史実vs史観:あるいは『無限ループ』から脱出して明日を迎えるには

丸山眞男がアツい(俺の中で) なぜアツいかというと,彼の『史観』のようなもの(私の読んだ限りでは,直接にそういった言葉を丸山は使っていないが)が,私にとって新鮮かつ自分の中の模糊としたものを明晰的に言語化してくれていたからだと思う。 彼の日本政…